松ヤニ

年が明けて、早いものでもう二月になってしまった

変化と、慌しい年末はとうに終わってしまった

 

クリスマスが終わってからの年の瀬は松の枝がたくさん売れる

来る新しい年に向けて多くの人が花や松を買いにくる

文化はまだ終わっていないらしい

 

毎日松の枝を触り、いらした方々が帰路持ちやすいように英字新聞で包む

店長の手は樹脂でベタベタで、真っ黒だった

 

何が楽しくて、生きているんだろうか

 

大切にしていたはずのものはあっけなくなくなってしまった

 

手放したつもりはない、離れていった

亡くなった分舞い込んできた

 

一度に持てる限界があるのだろうか、そう言わずにたくさん持たせてほしい、なのに、持ちきれずに溢れていってしまう

 

なくなった分、知らなかったことが見えた

私は、気づいていなかったけれど寂しかったのかもしれない

私は私に可哀想なことをしていたのかもしれない

でも、私にとっても、わたしにとっても、大切だと思ったから抱えていたはずだった

 

手に入れたものを失くすのはこわかった

今でもかわらず受け入れられていない、間違いない

あの時の私の意志は消えていない、だから受け入れられないでいることもある

 

ただ、新しく抱えたものは、ベタベタで真っ黒な松ヤニで汚れた手は、酷く美しくて涙が出そうだった