凪いでいる瞬間が、僅かでもあっただろうか 見つめ合ってからずっと、そんなものは ただひたすらに揺らいでいて、そこにあると知っているはずだった。 私にとっては他の何とも比べるものではなくて、そんな俗に落とし込みたくはなくて、ただただそのままだっ…

本を置くスペースがもうない。 買うだけ買って読んでいない本が積み上がっている。 粗雑なその空間が嫌いじゃない 最近やけに、言葉が出てこなくなった。 私を表に出すそれが見当たらなくなった。 だから、適当に吐き捨てる 悪くないんじゃない?少し苛つく…

無題

3年ぶりに見た祖母の肌は綺麗で、閉じた瞳のまつ毛は相変わらず長かった。 少しだけ頬がこけただろうか、横たわっているから肉が流れているだけかもしれない。 でも、きっと痩せたんだろうし、体も細く小さくなったような気がする。最後に会った時もこんな感…

松ヤニ

年が明けて、早いものでもう二月になってしまった 変化と、慌しい年末はとうに終わってしまった クリスマスが終わってからの年の瀬は松の枝がたくさん売れる 来る新しい年に向けて多くの人が花や松を買いにくる 文化はまだ終わっていないらしい 毎日松の枝を…

ラブレター

私にとって、言葉は特別だ 特別で大切で心を絞り出さないと紡げない 綺麗なものが好きだ。私が綺麗だと感じるものが好きだ。陳腐でも傲慢でも輝いていても綺麗だと感じるものは全て美しい。 静寂も、激情も、距離感も愛していた。愛してたし愛してる。愛して…

寝たら朝が来るから

吐き出しても溜まっていく一方なのは掻き出せていないからだ。 溜まっているのは知ってる。溢れそうになっていることも こんなに弱かっただろうか。私の心は、私の決意は、私は、こんなに弱かったのだろうか。 手先の痺れ、荒い呼吸、肌寒いのにながれる汗、…

失恋

失恋というものを、久しくしていない。ように思う。 恋を失うには恋が必要なのだ いつからか、恋愛にあまり興を講じなくなった。気の所為かもしれない。本当は求めていたのかも。 別に白黒つけなくてもいいことだ、そんな気がする。 私が自らの恋愛思考や性…

ヤニクラ

好きだ。 陳腐で、侮蔑が見え隠れして、けど煙を愛さずにはいられない人の言葉。私にはとても良い響きに聴こえる。 陳腐なものが好きだ。 同族嫌悪的に、拒否してしまっていることも認める。でも、結局すきだと思うから私はいつまで経っても厨二病なのだ。 …

月下の恋人

浅田次郎の短編集を読んだ。 敬愛する人に浅田次郎を薦められた。 私が、私の情緒は外に伝わるのだろうかとずっと考えていたことを、浅田次郎は文学に昇華しているような気がした。 私が選り好む情感がそこにあったような気がした。 少し気味悪いほど、私み…

エンパス

共感力の強い人をエンパスというらしい、が、とても浅い知識だから当てにはしないでほしい。 呑み込むつもりも吸収するつもりもなく、いつの間にか私の中に流れ込んでくる感情や感覚がある 私のものではないものが私から溢れることがある。 泣きながら悔しい…

頑張れない日

も、ある。 心が動かないことに私も困っているのだ。 呼びかけても寄り添っても、動かない。 きっと届いてはいるのに。 まだまだ私は私と仲良くなれていないのかもな。様子を伺うだけで、その声を聞けていない。 聞きたいと思っていることだけでも、知ってお…

ポカンポカン

仕事が終わって帰り支度をして外に出る。 今日は早番だったから、まだ今日が終わらないでいてくれた。 日が明るい。夕方ではなく昼間の空だ。 一面曇りだけど明るい。 駅に向かって歩く15分間。 立ちっぱなしだった足の気怠さとは裏腹に気持ちはあがる。 歩…

繋がる

視覚ではなく、感覚なのだ 目に見えない繋がりがある。 確かにある。 庭先でひとり咳をしても、其れは情景であって断交ではない 孤独は風情だ。絶海の孤独などない。 細くきらめく糸 オーガンジーの様な透明感と光沢のあるベール その端を私は掴んでいる 数…

珈琲

海の見えるテラスはいつも騒がしい そこにある全ての人に、それぞれの別の時間が流れている 「私達は全員違う世界に生きている」そんな風に考えているのは、今この場で私だけだろうか 夕方に近い空よりは鮮やかで夜の海よりは明るい色のシャツを着た老父のハ…

太陽の人

まるで太陽だ 陽の気がすごい。私にはなかったものを目の当たりにした。 内側から発光している。 きっと世界が輝いて見えているのだろうな。 当たっていくことを恐れない。砕けることを知らないのだろうか。 そうだ、太陽の人は砕けることを知らないのだ。 …